平成27年12月3日(木)曇り 今日は、アカカンガルーのハヅキ(♂)を紹介します。 (写真:平成27年12月3日 現在)
ハヅキは、昨年8月28日誕生日。 お父さんは、ツバサ、お母さんはイロハ。 当園では、母親のポケットから初めて顔を出した日を 誕生日としています。 昨年の今頃は、こんなにあどけなかったんですよ(↓)。
(写真 :平成26年12月20日)
{写真:平成26年12月21日 左 ハヅキ(子)、右 イロハ(母)}
{写真:平成26年12月21日 左 イロハ(母) 右 ハヅキ(子) 哺乳中}
ハヅキは、この1ヵ月後(今年の1月中旬過ぎ) いわゆる「カンガルー病」に罹りました。 はじめに、元気がなく、食欲もないことに担当者が気づき 口の中を確認したところ、口角(こうかく)の両内側が裂けて化膿。 治療をはじめましたが、翌日にはさらに悪化。 体に力が入らず、寝たきりに。 心臓も弱って、徐脈(じょみゃく)と不整脈(ふせいみゃく) 意識もとぎれとぎれで 痙攣(けいれん)などの神経症状をひきおこしていました。 ここから、彼の闘病生活がはじまります。 保温、治療、介護。 いつ心臓がとまってもおかしくない状態が続きました。 彼が、唯一(ゆいいつ)、意識的に動かせていたのが口。 エサをほそく切って口に入れると、しゃくしゃくと 懸命に口を動かして食べてくれました。 寝返りは自分でできないので、1日に何度も体の向きを変え 尿も垂れ流しなので、尿やけによる皮膚炎を引き起こさないように 毎日お湯で体を拭き・・・ 家族やペットの介護をされた方は、想像がつくかと思います。 手足の麻痺(まひ)などの障害は残るかもしれない 一生寝たきりになるかもしれない 群れに戻れないかもしれない ・ ・ ・ でも、今、彼は生きようとしている。 ならば、わたしたちもできる限りのことをしよう。 毎日、他の診療の合間に、マッサージも続けました。 血流がとどこおらないように、筋肉が固まらないように。 回復がみられはじめたのは、しばらく後。 頭をもたげて、反応するようになりました。 さらに、しばらくすると、上体を起こせるようになりました。 ギギッ、と甘えた声をあげ、エサをねだります。 さらに、今度は後ろ足も動かせるようになりました。 痙攣(けいれん)も、みられなくなりました。 こうなると、 回復は早く。 右前肢には、まだ違和感が残り エサを手で持って食べることはできないまでも 立ち上がれる時間が長くなり、ジャンプすることもできるように。 闘病開始して1ヶ月経過。 ・ ・ ・ ここまで回復したならば できる限り、早く群れに戻してあげたい。 人馴れして、カンガルーの社会がわからなくなる前に。 動物園の動物たちは、野生動物です。 そして、動物園は、野生動物の本来の生態や行動を 身近に学ぶことできる場所です。 群れ社会で生きる動物には、それぞれのルールがあります。 群れからひきはなして、ペットのようにかわいがるだけでは 野性の群れで生きていく術(すべ)を、失ってしまいます。 とくに、ハヅキはまだ若く、アカカンガルーの群れ社会を 学んでいく大事な時期。 そこで、まず、母親のイロハと顔合わせ。 イロハは、わが子を忘れていませんでした。 そこからは、群れ復帰も、段階をふんで順調に行きました。 まだ、手を使わず口だけで食べる姿をみかけますが それ以外は、ほかのカンガルー達と変わらず。 今では、体格も母親のイロハを追い越しました。 ・ ・ ・ が。 {写真:平成27年12月3日 左 イロハ(母)、右 ハヅキ(子)}
まだまだ母親にはかなわず。 今日も、ドシン、とやられました。
イロハ、強し・・・。
ハヅキは、顔の模様が特徴的なので、見つけやすいです。 鼻の右上の白斑が大きく、耳から顎にかけての白線も太いです。 動物園にこられるときには、ぜひハヅキにも会いに来てください。 診療教育班 上野 明日香 |