サンショウウオのお世話は大変!?
サンショウウオはカエルと同じ両生類の仲間。卵からかえって水中でエラ呼吸をする幼生の時期を過ごした後、やがて「変態」。手や足も生えて、肺呼吸へと変わるのが特徴です。
サンショウウオというと実物を見たことがない方も多いかもしれませんが、狭い国土に多くの種類のサンショウウオが分布している日本は、世界的にみると『サンショウウオの聖地』といってよいほどだそうです。
動物資料館では、カスミサンショウウオ、オオイタサンショウウオ、トサシミズサンショウウオの3種類のサンショウウオを飼育しています。日本が『サンショウウオの聖地』とはいえ、どのサンショウウオも生息場所は環境開発の影響を受けやすく、激減しているのが現状のようです。
尾の黄色い筋が特徴のカスミサンショウウオ
中でも、トサシミズサンショウウオは、1972年に高知で発見された当初から、大分と宮崎、熊本の一部に生息するオオイタサンショウウオと考えられていましたが、DNA検査に加え、ひと回り小さい体や腹部の白っぽい斑点などから約2年前(2018年)に別種だと判明したばかり。
トサシミズサンショウウオ
少し緑がかった体色で腹部に白い斑点が見える
トサシミズサンショウウオの成体は、現在、土佐清水市(高知県)の沼や湿地で約200匹が生息していると考えられていますが、生息地が非常に限られているため絶滅が心配されている絶滅危惧種(環境省レッドブック絶滅危惧ⅠA類(CR)*)です。
*:ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
動物資料館で飼育している個体は、トサシミズサンショウウオの保護活動を行っているワンパークこうちアニマルランド(高知市)から譲り受けたものです。当時はオオイタサンショウウオとして譲り受けたもののその後新種と判明して私たちスタッフもビックリ!!
オオイタサンショウウオ
トサシミズサンショウウオより一回り大きい
サンショウウオの仲間は、世界最大の両生類であるオオサンショウウオが一生のほとんどを水中で過ごすことが知られていることから、成体になっても水中で生活するというイメージがあるかもしれません。しかし実際は、森の倒木、落ち葉の下や河原の岩の下などに住み、水に入るのは繁殖のときだけということが多いようです。
ほとんどのサンショウウオは夜行性で、地面にいる昆虫やワラジムシ、ミミズなどを食べています。
このような生態のサンショウウオなので、資料館で飼育する際にもいろいろなことに気を付け、工夫をしています。
まずは毎日のご飯。サンショウウオには冷凍赤虫を解凍して、1匹1匹にピンセットで給与。トサシミズサンショウウオの野生由来のものは、ここに来た当初全く食べなかったので、ミミズを小さく切って与えたりしたことも今では思い出になっています。時々御馳走でコオロギやキビナゴを小さく切ったものも与えています。
サンショウウオのご飯
飼育環境も大切です。1~4匹をプラスチックの飼育ケースに分けて飼育。飼育ケースの中には目の細かな砂利を薄く敷いた上に底から0.5~1cmの深さに水を張り、カワラの割れたものや管状の隠れ場所を用意しています。できるだけストレスがないようにするためです。
ボクのおうちはここです!!
そして、何よりも大切なのは、温度と清潔です。現在は22℃の室温で、週に3回ほどはケースの清掃、水替えをすることにより、飼育環境の清潔を保つことを心がけています。とはいえ、かみ合いをしてけがをする個体があったり、夏場にご飯の食べ残しにカビが生えたり・・・気を付けていても失敗もイロイロ。なかなか大変です。
そんな時は、サンショウウオの飼育の先輩であるワンパークこうちアニマルランドのスタッフさんたちがとても頼りになる存在です。たくさんのアドバイスをいただきながら、資料館のスタッフはサンショウウオの飼育に励んでいます。
『サンショウウオの聖地』の希少なサンショウウオたちを守り育てながら、この次にめぐり来る早春には、トサシミズサンショウウオの繁殖にも挑戦したいと考えています。熊本市動植物園は、ワンパークこうちアニマルランドと一緒に希少生物であるトサシミズサンショウウオの保全活動に取り組んでいきます。
☆★資料館・津田★☆
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