オヤニラミのイカリムシ退治
動物資料館には江津湖に住んでいる色々な魚たちがいます。オヤニラミもその一つ。オヤニラミは日本在来の肉食性の淡水魚(スズキ目ケツギョ科)です。
オヤニラミの外見上の特徴は、エラブタの後ろの方についている目玉のような模様です。この模様は本物の眼より大きく大変目立ちます。性質は非常に攻撃的。縄張り意識が強く、自分の縄張りに侵入してきた魚に対して攻撃を仕掛けます。
元気なオヤニラミ
資料館では、展示室に1匹と研究室に2匹、計3匹のオヤニラミを飼育しています。研究室の2匹はスタッフが3月に捕獲してきたものです。そのうちの1匹には、資料館にやってきた時にすでに尻びれに線状のムシがぶら下がっているのが見え、皮ふに怪しげな盛り上がった個所がいくつかあり、「イカリムシが付いているのでは・・・」と注意して観察してきました。そして、ついにそのイカリムシを退治する日がやってきたのです。
イカリムシは、細長く魚体にとどまってその血液を吸って生きる吸血虫の一種です。虫体の先端に二分する突起があり、それぞれが横に伸びてこの部分が碇のように見えることからイカリムシという名前が付いたようです。イカリムシは、この突起の部分を利用して魚に寄生します。
今回摘出したイカリムシ
イカリムシが魚に寄生すると、その部分は徐々に充血し、二次的病気を引き起こすことにより、魚が死んでしまうことがあります。今回イカリムシを摘出したオヤニラミも尻びれは真っ赤に充血し、目のふちがぼっこりと盛り上がっていました。
摘出直後の魚体
眼やひれの充血が痛々しい
いよいよ摘出手術!オヤニラミを水槽から引き揚げ、少量の水を張ったボウルの中でピンセットを用いてイカリムシを引き出しました。実にワイルドな方法(これが確実!)です。オヤニラミは多少弱ってはいたものの、少し暴れて背びれの棘がスタッフをチクリ。それでも、「よしよし・・・」となだめながら尻びれから3匹、むなびれから2匹、計5匹のイカリムシを取り出すことができました。その間わずか2~3分!あっという間の出来事でした。
ピンセットで尻びれから摘出
塩水が体にしみる!
その後、オヤニラミをもとの水槽に移し、塩浴をさせました。塩浴は、イカリムシの治療法の中でも、最もやりやすい方法で、水槽の水に対して0.5%の塩を入れます。ただそれだけですが、オヤニラミなどの魚は体中の塩分濃度と水中の塩分濃度が違った場合に、浸透圧を調節する能力があって少々の塩分濃度に耐えることができます。一方、イカリムシなどの寄生虫や体表についた細菌にはその能力がないので、体内の水分が奪われ死んでしまうのです。
つまり、ピンセットによる虫体除去と塩浴、2段構えのイカリムシ退治でした。
水槽に塩を入れられたオヤニラミは、少しボーっとした様子で泳いでいました。イカリムシを摘出した後の傷口が「しみるなあ」と思っていたかもしれませんね。そして、4日後には、まだ充血は少し残っていますが、見違えるように元気に泳ぐ姿が見られました。イカリムシ退治は無事終了です。
元気になったオヤニラミ
☆★資料館・津田★☆
|