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資料館つれづれNo.28『この子は誰の子?』

2020年4月10日(金)

この子は誰の子?

 

4月8日の朝、動物資料館に園内の乗り物等の遊戯施設担当スタッフさんが訪れました。その手には小さな卵が2つ。「何の卵かな?」というご質問でした。

 

1

小さな卵は何の卵かな?

 

卵は短径が1cmほどの小さなもので、淡いクリーム色にウズラの卵のような模様が控えめについていました。一つは中身がなく、もう一つには中身が入っている感触です。ティーカップの横の芝生のところに落ちていたということでした。

 

2

こんなところになぜ卵?

 

「鳥の卵とは思うけれど、何の卵かなあ。」図鑑を開いてみると、どうもスズメの卵のようでした。

 

スズメは、例外はあるものの通常は樹上ではなく、屋根の下で人目に付かないようなところに巣を作ります。屋根と瓦の隙間や街灯の隙間等人工部構造物の隙間など、ちょっとした隙間や穴があれば巣を作ることができます。人の生活圏に入り込んで住むことでカラスやネコなどの天敵から身を守るためです。

 

そこで、落ちていたというティーカップのところに行ってみました。スズメの巣はどこだろう、どうして2個の卵が落ちていたのだろうと思って見回してみました。近くにいたチンパンジー担当のスタッフに尋ねたところ、ティーカップすぐ横にあるチンパンジー舎にスズメが巣を作っているとのこと。早速探しに行きました。

 

3

とんがり屋根のところにスズメの巣

 

周りを飛ぶスズメを見ていると、屋根の雨どい部分からしきりに出入りしています。ひさしの下の方に行ってのぞいてみると・・・ありました小さな隙間に枯れた草がたくさん詰まったものがスズメの巣です。

 

4

しきりに出入り

 

5

ひさしの上の方に目を凝らすと・・・

 

6

発見!

 

2個の卵が見つかった場所からおそらく一番近い巣のようでしたが、なぜティーカップの芝生のところに落ちていたのでしょうか?

 

動植物園内では多くの種類の鳥を見ることができます。カラスハトのほかアオサギダイサギなどのサギ類やカワセミも見ることができます。その中で、カラスは親鳥がいない間にスズメの巣から卵やヒナを持ち出して食べることがあるそうです。あの卵もひょっとしてカラスの仕業かもしれません

 

カラスなどのスズメ目(広い意味でのスズメの仲間)の鳥類は、産卵した卵の約9割が孵化することが知られています。しかし、私たちがよく知るスズメの卵は、孵化率がわずか6割。スズメ目の中でも特に低いのだそうです。

 

最近建てられる家は気密性が高く昔の家のように隙間がありません。さらに地面もアスファルトで固められ草地も少なくなり、巣材を調達するのも難しくなっています。このようにスズメが安心して巣を作る場所が減ってきたため、近年スズメの数が減っているといわれています

 

動植物園の中は、自然環境も良く巣を作る場所もあってスズメにとってはよい環境のようにも思われますが、元々孵化率が低い種類である上、カラスという天敵もいて、実際はなかなか厳しい環境なのかもしれません。

 

街中とはいえ、動植物園ではコロナ騒ぎなど全く関係なく厳しさいっぱいの自然の営みがありました。

 

☆★資料館・津田★☆

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