みなさん、 カンガルーに対してどんなイメージがありますか?
ぴょんぴょん軽快にとび跳ねていたり
地面の上で気持ちよさそうに寝転んでいたり
動物園ではそんな姿を見ることが多いと思います。
ですが、実はカンガルーは動物園にいる動物たちの中でも 体調管理の難しい動物なんです。
その1番の理由は 「カンガルー病」と呼ばれる カンガルー特有の病気。
顔や頬が腫れてしまうような病気です。
これが正常時の顔 (オス ジュワくん) そしてこちらがカンガルー病に かかってしまったときの顔。
頬がパンパンに腫れ上がり、 目が小さく、よだれも出ています。
原因は、 ●土壌や、動物の口腔内などに普通にいる菌たちにより虫歯や歯周病が悪化。
●食事中、口腔内を傷つけたり、歯に挟まったりして、虫歯や歯茎が化膿。
●歯の生え変わり時に、食べ物が詰まって化膿。 (カンガルーは、6歳まで歯の生え変わりがあると言われています。)
傷口が化膿しやすい動物であることもカンガルー病を引き起こす要因になっているみたいです。
ひどいときは顎の骨まで感染し、死亡してしまうこともある怖い病気・・・。
カンガルー病にかかると 顔の腫れ よだれ 涙などが見られます。
食欲もおちるので、元気がなくなり、 衰弱してしまう本当に怖い病気です。
なので体調チェックには気をつけています。 朝一、お昼、夕方、何度も顔の表情や動きをチェックします。 「顔の腫れはないか?」 「よだれ、涙は出ていないか?」 「餌はちゃんと食べれているか?」 「元気はあるか?」
飼育員がじーっと観察しているのを見かけたことがありませんか? これはカンガルーの健康チェックをしている時なんです。
野生では、 やわらかい青草などを主食にしている動物。
動物園であげる餌にも気をつけています。
現在あげている餌は、ペレットとニンジン、白菜、キャベツ。 野菜は口腔内に残りにくいようにスライスしてあげています。 果物などの甘いもの、パンなどの口の中に残りやすいものはあげていません。
野生だと、糖分の多い食べ物を食べることはないので虫歯はほとんどありません。 果物など甘いものをあげるとどうしても虫歯になりやすいです・・・
これは他の動物たちも同じです。 サル類はバナナのイメージが強いかもしれませんが、 当園では虫歯予防のために、ニホンザルは特別なイベントの時以外甘いバナナはあげていません。
本来、主食としている青草はやわらかいため、 口腔内を傷つけるリスクも少なく、口のなかに残っても果物やパンと違い糖分が少ないので 虫歯になるリスクも低いと考えられます。
そこで、去年の夏にメスの展示場に芝生を生やしました。
これにより、外で草を食べる時間が長くなりました。 これが関与しているのか分かりませんが、 以前よりカンガルー病が減ったように思います。
なるべく草を食べてほしいですが、冬は芝生が育たないため 補えない部分はカシやケヤキなどの枝葉を定期的に与えるようにしています。 新芽の時期は葉もやわらかく食べやすいので カンガルーたちの大好物です!!
また 毎日体調チェックをしていると あれ?いつもと何か違う、、、 ちょっと元気ないかな? というときがあります。
そういうときは、 その日のうちに他の個体と部屋を分けて 餌をちゃんと食べているかやうんちの状態などを見ます。
もし食欲や元気が無い場合は獣医さんと相談して、 抗生剤(悪い細菌をやっつける薬)や消炎剤(痛み止め)を打ってもらうこともあります。
それでも回復しないときは、麻酔をかけて口腔内を確認します。
カンガルー病は、悪化すると死んでしまう危険な病気です。 早期に発見できれば、獣医さんと協力して治療することができます。
人工哺育で育ったジュワくんは、 飼育員の後を追いかけてきたり 抱きついてきたりするのがお決まり。
これをしない時は大体元気がないときです。
また、抱きついてきても力が弱いと あれ?ちょっと元気ないかな? 怪しいな、、、?と どれくらい元気があるのかを判断することができます。
ほかにも、朝一展示場に出てすぐにアンコくんと決まったコースを ランニングするのがチャンコくんのルーティーン。
しかし、以前その行動が見られなかった時、 数日後には首の部分から腫れが見られました。
日頃の観察から健康な時の状態を知ることで、 異変に気付くことができ、カンガルー病の早期発見にもつながります。
これから カンガルーたちの健康のために 日々の観察を重ねて 発症を繰り返す個体は、他の個体と何が違うのか検討し、 餌の改善などできることをいろいろ試してみたいと思います。
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