8月30日、9月1日、熊本市内の高校生を対象にした【動物園の問題点を考える~ここが変だよ動物園~】と題したプログラムを東海大学農学部と熊本市動植物園、 京都大学野生動物研究センター 熊本サンクチュアリ 共催で開催しました。 動物園では飼育スタッフが、動物たちが退屈しないように、快適に過ごせるようにと飼育展示方法に趣向を凝らし、またお客さんに動物たちのことをもっと知ってもらえるような掲示物を作るなど、日々試行錯誤しています。それでもねたに行き詰ることもあり、今回高校生の意見を聞いて、もっと素敵な動物園になろうと企画したものです。 このプログラム、なぜ高校生を対象にしたかというと、高校生になると、色々と忙しいようで動物園に来園する機会がグンと減ってくるからです。あえて、来園する機会の少ない高校生の新鮮な意見を聞いてみたい!ということで、開催しました。 今日のブログでは8月30日の様子をお伝えします。当日は14名の高校生が参加してくれました。まず、ほぼ何の説明もなく、グループに分かれて、「動物園」と聞いてイメージするものをひたすら付箋に書いてもらうことからスタートです。 まだ、みんな緊張して、手はお膝状態。 次にみんなが動物園と聞いてイメージすることのグループ分け。チラッと覗き見すると、「遠足」や「楽しい」「元気にしてくれる」などプラスのイメージもあれば、「くさい」「暑い」「檻が狭い」...マイナスイメージもたくさん出ています。 施設についてのグループ、お客さんについてのグループ...さすが、高校生。作業が早い! 次に東海大学農学部の伊藤先生の「動物園のなりたち」と樫村先生の「絶滅しそうな動物」についての講義。今回の参加者は、動物園に興味のある高校生。みんな大学の先生の生の講義を集中して受けていました。 伊藤先生 動物園の歴史について
樫村先生 動物が絶滅する原因について お昼休憩をはさんで、園内の動物舎の見学です。「みなさんが大人になって、子供と行きたくなるような動物園は?を想像しながら、見学してください!」というコンセプトの元、どんな質問にも包み隠さず答えます!と、獣医師が案内しました。 地震で閉園中のエリアからの見学スタートです。さっそく、環境エンリッチメントで設置しているフィーダーについて、何のためにあるんですか?との質問。 そして、ここも地震の影響で一般開放していないキンシコウ舎。久しぶりの若い人に、飛飛と優優も喜んで枝から下りてきての大サービスです。みんなスマホで撮影開始!
地震前はクロクモザルとワオキツネザルがいたモンキーアイランド。水が苦手な種類は、周りを水で囲むことで、逃げ出さず、開放的な展示ができます。
アフリカゾウの前で、集合写真! 1時間ちょっとで園内を回るというハードスケジュールでした。その短い時間ですが、たくさんの質問や感想が聞けました。放飼場から獣舎への傾斜は、動物に必要かとか、開放的だが、狭すぎないか?などなど高校生たちの素朴な疑問が心に突き刺さります。 そして、見学の後は、講義です。園内を見て回った後なので、感じ方も違ってきたのではないでしょうか。疲れのピークの時間帯ですが、みんなとても熱心に先生方の話を聴いていました。 まずは、東海大学農学部の今井先生の「哺乳類の子育てについて」、そして大牟田市動物園の飼育員 伴さんの「環境エンリッチメントとハズバンダリートレーニング」です。今井先生は、親子関係の大切さを、伴さんは動物の日々の生活を豊かにする環境エンリッチメントや動物の健康チェックの時に負担をかけないようなトレーニングの実践を写真や動画で紹介されました。
今井先生 哺乳類の子育てについて
大牟田市動物園 伴さん 環境エンリッチメントとハズバンダリートレーニングについて 最後のまとめの前に、楽しいワークショップタイムです。講師にイラストレーターのアドさんに来ていただき、まずはライオンと牛の絵を描いてください!とのお題。絵が得意な学生さん、苦手な学生さん。とても対象的で、見ている主催者も楽しい時間になりました。個性的な絵が、たくさん!
牛はあらかじめ配ってある絵には載ってますが、参考になるものがないライオンになると筆が止まる... いきなり牛やライオンの絵を描いてもらったのは、動物の体の形や関節の位置・数が実は想像しているものとは違うのを知ってもらうため。で、次にアドさんが出されたお題は、写し絵。そこで初めて、こんなところに関節があるんだぁ!などとあらためて感じてくれたようです。
写し絵を描いています。みんな真剣! 写し絵で、少し動物の絵に慣れてきたら、最後のお題。フィギュアや写真を見て、もう一度動物を描いてみよう!
中央の方がアドさん。みんなどれを描こうかなぁとフィギュア選び中
姿勢が悪いのではありません。一生懸命、フィギュアとにらめっこしています そしてまだまだ描きたりないようですが、ここでアドさんのワークショップは終了。みなさんもこのお題、挑戦してみてはいかがでしょうか?多分、日頃動物を見慣れている私も、正確に描く自身は、全くありませんが... 最後に、本日のまとめ。また付箋の出番です。今日のプログラムを通して、動物園のここが変だなやここは変えたほうがいいよ!と思ったこと、動物園のマイナスイメージを書き出してもらいました。最初はなかなか出てこなかったようですが、少しとまどいながらも、付箋に書き出してくれました。「動物が同じ行動ばかり」や「飽きる」「看板がおもしろくない」などなど...チクリチクリと痛いところを突いてきます。 出るわ、出るわ。動物園のマイナスイメージ マイナスイメージを出し切ってしまった後、またこれもグループ分けをし、最後にもう少しアイデアを出してもらいました。今日、感じた動物園の変だよ!と思ったことの解決策を考えて!という課題。参加者みんなが動物園スタッフや経営者以上に、とても真剣に考えてくれました。 身をのりだしてのディスカッション! たくさん出た解決策。このまま眠らせるのは、もったいないものばかり!という訳で、その発表の場を今後、設ける予定です。 今後、高校生たちはプログラムの一環で、熊本サンクチュアリの見学や9月30日に熊本市動植物園で開催予定の東海大学農学部と共催のシンポジウムへの参加、11月17日・18日に東海大学熊本キャンパスや熊本市動植物園で開催予定の第21回SAGA(アジア・アフリカに生きる大型類人猿を支援する集い)シンポジウムへの参加が予定されています。 とても熱心に、動物園のことを考えてくれた高校生たち。シンポジウムでは、するどい突っ込み満載の発表やディスカッションを見聞きすることができるかもしれません。乞うご期待!
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