ムシムシ観察記 エンマコオロギの巻 唱歌『虫の声』で「キリキリキーリキリ、コオロギや~♬」と鳴くとされているコオロギ。コオロギの仲間は世界には3000種ほどが知られており、日本にもヒメコオロギのような小型のものをはじめ30種以上が生息しています。その中でも体が大きなエンマコオロギの動物資料館での様子についてご紹介しましょう。
エンマコオロギの雌 動物資料館で飼育されているエンマコオロギは3年前に園内で捕獲した個体を繁殖させて命をつないだものです。もともとはカエルなどの両生類のごはんという立場でした。時々、リスザルなど園内の他の動物のごはんになることも。
アカガエルのごはん! しかし、通常は「コロコロリー♬」と美しい声でなくエンマコオロギ。その声の美しさはみなさんご存知の通りなので『鳴く虫』の仲間として毎年開催される『鳴く虫展』出展のためにも飼育されているのです。「キリキリ」という鳴き声は威嚇音でオス同士が縄張りなどを主張する時に発します。
白い腹巻がキュートな幼虫 通常、冬の間は卵を休眠させる(卵のまま冬を越す)飼育ケースと、研究室で一定の室温(22℃)の中で次々と孵化させる飼育ケースと両方準備します。ところが、昨年秋からの資料館の空調工事のため、室内設置の飼育ケースの個体は寒い冬を過ごすこととなりました。 飼育ケースの下にシート型のヒーターを敷いたりしましたが、空気が冷たいと効果もあまりなく、思うように卵はかえってくれませんでした。やっとかえった幼虫を細々とカエルのごはんに使っていましたが、春が訪れると様子は一変!同じケースの中で多くの幼虫が次々に姿を現し驚きました。
春が来て次々にふ化 休眠おそるべし!! もともと休眠させた飼育ケースの卵の方が一定の温度を保ってふ化させた卵よりもふ化率がよいことには気が付いていました。スズムシでも同様です。しかし、これほどの違いがあるとは思いませんでした。 ふ化した幼虫は脱皮を繰り返しながら成長します。エンマコオロギは高くジャンプし、あごも強く飼育ケースを覆ったネットも食いちぎって穴をあけるほどです。
脱皮直後は白い!
触角の先まできれいに脱げた皮 またまた寒い冬がやってきます。現在、資料館の戸外バックヤードに休眠させている飼育ケースと研究室内で一定の温度(20~22度)管理のもとふ化を待つ飼育ケースがあります。今、成虫は1匹もいません。
ケースの下にヒーターを入れて温めます 早くふ化させるべく、一定温度下でもヒーターを入れたり入れなかったり、良い温度加減や湿度加減をさがして試行錯誤の毎日です。 ☆★資料館・津田★☆ |