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動物だよりvol.525 チンパンジーのユウコについて

2018年7月20日(金)

平成30年7月20日(金)

 

 

熊本地震発生から828日。

 

 

 

チンパンジーのメスのユウコについてお知らせします。

 

 

熊本地震後、施設修繕のため非公開となっていたチンパンジー舎ですが、明日から、約2年3ヶ月ぶりに観覧できるようになります。

 

 

震災後から、5人のチンパンジー達をずっと気にかけて、応援してくださった方々に改めて感謝を申し上げます。

 

非公開となっていた間にユウコに起こったことについて、ご報告します。

 

ユウコは昨年の11月の初めに、右足に異常をきたし、急激に症状が悪化した後、11月25日に右足の断脚手術を受けました。

 

119日:右足を上げたまま地面に着けない、1121日:右足を引きずる、1122日:右足首より先が腫れる、1124日:右足の皮膚の色が黒ずむ)

 

手術の結果、右足の大腿動脈に血栓が見つかり、また、右足の大腿部筋肉に壊死が認められました。

 

その後は傷の経過は良好に進み、現在は完治しています。

 

また、手術後に活力低下が認められ、検査の結果、重度の鉄欠乏性貧血が見つかりました。

 

その後、継続的な鉄剤の経口投与によって、徐々に移動時間が増え、活力も戻り、現在は以前と変わらない状態に戻っています。

 

一方で、残った左足を補助的にしか使わなくなったことを問題視しています。

 

手術後、初めのうちは両手と左足を使った3点歩行をしていましたが、1週間ほど経過した後、左膝を曲げて座った状態で、おしりを地面に擦りながら移動するようになりました。

 

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(両手を同時に地面に着け、松葉杖のように体重をかけて移動することから、松葉杖歩行と表現しています。)

 

実際のところ、ユウコはこの松葉杖歩行での平面移動はもちろんですが、ハシゴの上り下りなどの上下移動や、全天(全天候型屋内展示室)での立体的な空間移動(ジムの上り下り、空中の消防ホース上の移動など)も両手の力を使って、そこまで不自由なくできています。

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よって、生活自体には大きく支障はないと思われますが、長期的に残った左足を使わなかった場合、様々な問題が生じることが予想されます。

 

・左足の関節の拘縮(固まって動かなくなること)

 

・左足の血流が悪くなることで、血栓ができやすくなる

 

・左足を動かさないことで、消化管の運動も悪くなる

 

そこで、左足の使用を促して、上記のような問題を解消するために、ユウコのリハビリを始めました。

 

効果的なリハビリを行うにあたり、

 

株式会社Re学 代表取締役で、理学療法士であられる川畑智先生、東海大学 農学部 応用動物科学科 動物行動学研究室(https://www.facebook.com/tokai.univ.animal.behaviour.lab/)の伊藤秀一先生にご協力を仰ぎました。

 

 

お二方とも快く、ご協力、ご指導をしていただけることとなり、動植物園を合わせた三者による共同研究としてリハビリを行っています。

 

本格的にリハビリを始めてから1ヶ月が経ちました。

 

その間、東海大学4年生の森雅紀さん、佐藤優菜さんにリハビリの行動観察およびデータの解析を行って頂きました。

 

結果については、別の機会に報告させていただきます。

 

長くなりましたが、以上がユウコの今日までの経過でした。

 

今後も、ユウコも私達飼育スタッフもリハビリを頑張っていこうと思います。

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ユウコ以外の4人のチンパンジー達(マルク、ノゾミ、カナエ、クッキー)も、足を失ったユウコのことを心配し、体調を気遣ってくれていました。

 

エサを採りにいくとき、どうしても周りに遅れをとってしまうユウコですが、他のチンパンジー達はユウコが採りに行こうとしているエサは狙わずに、ユウコを優先するような行動を取っていました。

 

普段なら、エサは競争して取り合うのですが、いつもと違う様子で頑張って移動しているユウコを気遣っていたのだと思います。

 

改めて、弱者を気遣う、チンパンジーの群れにある強い絆を感じました。

 

最後になりますが、ユウコの症状が出始めてから、術中、術後の管理に至るまで、ご協力およびご指導いただきました、鵜殿俊史様をはじめとする熊本サンクチュアリの方々に、この場を借りて改めて感謝を申し上げます。

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明日からユウコの姿を見られた際、びっくりされるお客様も多いかと思いますが、手術前と何ら変わらず、明るくのんびりと頑張っているユウコを応援して頂ければ幸いです。

 

皆様のお越しをお待ちしております。

 

 

 

 

 

 

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